放置空家問題

 放置空家問題 

【所有者不明土地(建物)管理命令申立制度を利用した放置空家解決に向けた新アプローチ】

この研究会の活動に参加するようになって3年が経ちますが、放置空家・放置空地は産業廃棄物と変わらない害悪を周辺住民にもたらすものだと思うようになりました。かつて不動産は金価格と同じように時代を超えて価値を有する資産だと考えられてきましたが、不動産のなかにも勝ち組と負け組があって、人口減少とともに不便な場所にある不動産は捨てられて荒廃し、今も地域で住み続ける住民にとって多大な迷惑をかける廃棄物と化しています。

自動車にはリサイクル券があり、廃車の手続きの際にはクルマと車検証と一緒に解体業者に渡します。また家電4品目についてもリサイクル料金が必要になり、市の指定業者へ持ち込む前に郵便局で家電の種類に応じた金額のリサイクル料金を払わないと引き取ってくれません。一方で、住まなくなった家屋や使うことがなくなった土地には、そのような制度がありません。家屋を解体するには数百万の費用がかかりますが、廃墟のまま放置して逃げている所有者は何の責任も誰からも問われることもなく、まさに逃げ得の状況にあります。住まなくなった家屋をきちんと解体して更地にしてから新しい土地へ出て行く所有者と比べると、その不公平さは看過できないものがあります。

有形固定資産はいずれ耐用年数を迎えると除去される物であります。除去するときに備えて事前に除去債務を認識して、建物に住んでいる期間中に積み立てておかなければなりません。マンションの積立金で、修繕や建替えをするように、戸建ての家屋もいずれ解体される物ですから、解体費用は積み立てておかなければならないと思います。

無責任に不動産を放置して、周辺住民には所在を知らせずに、個人情報保護法という隠れ蓑を悪用して逃げている所有者を誰も責任追求できないこと自体が、放置不動産問題の解決を困難にしており、さらなる放置不動産を生み出している元凶だと思います。

固定資産税は普通税(税収の使途が定められていない税)であり、徴収した市町村により、道路や学校、公園などの公共施設の整備に使われるほか、介護福祉などの行政サービスにも使われています。前記の自動車や家電のリサイクル料金と同じ役割を固定資産税にも持たせることは無理だとしても、固定資産税の税収を使って市役所が本気で放置空家・放置空地対策をすることはできるのではないかと考えます。固定資産税を徴収している税務課の職員と、空家対策をしている建築指導課の職員がもっと情報を共有化して、さらには不動産登記制度を所管する法務省とも連携することにより、「不動産の放置は絶対に許さない!」という仕組みを構築すべきだと思います。

不動産を産業廃棄物のようなゴミにしているのは、放置している所有者です。でも隣近所や周辺住民、町内会、市役所が連携して動けば、それは防げるものだと信じています。放置不動産だって地域のみんなの協力があれば、再び魅力ある不動産になれるのです。ただしそれは、不動産の市場価値が再現されて、今まで放置してきた所有者が売り抜けて美味しい思いをするといった形になってはいけないと思います。不在地主と周辺住民の協力による「不動産の利活用」こそが、放置空家・放置空地問題の解決の唯一の方法だと思います。

これまでは研究会の活動として地域の美化活動として、放置空家や放置空地の管理を行ってきました。しかしこのような力技には限界があります。では、空家空地対策を根本的に解決するにはどのようにしたら良いのか?

その答えを求めて、新しいステージに進みたいと考えます。

具体的には、法務省が新しく作った『所有者不明土地(建物)管理命令申立制度』を利用して、放置空家問題を解決するアプローチを実行してみたいと思います。費用がかかる制度なので、まだ実際には活用事例は少ない制度ではありますが、従来の市町村における放置空家解決に向けた手法では問題を解決できないことから、国が作ったこの新しい制度で、諦めムードが漂う「放置空家問題」の現状を打破するきっかけを作っていきたいと考えます。

今後、実際に申立てを行なって、審理手続きが進行するとともに様々な課題が見えてくると思います。その具体的な推移を今後書き記していこうと思います。


2024年10月 【裁判所への申立書の提出と佐世保市役所への住民票の交付請求】

 長崎地方裁判所佐世保支部へ行き、申請書類の雛形を貰って来ました。申請書はパソコンで作成したものを2部提出する形で、他に添付書類として、
①所有者の土地又は建物に係る登記事項証明書、
②固定資産評価証明書、
③不動産登記法14条1項の地図又は同条4項の地図に準ずる図面の写し、
④土地(建物)の所在地に至るまでの通常の経路及び方法(土地(建物)の住居表示を記載する。)を記載した図面、
が必要であることが分かりました。
 ①と③については法務局ですぐに取得できました。③の公図はゼンリンの地図とは全く別物のような歪つな形状をした表記の地図でした。パズルを解くような感覚で④のゼンリンの地図と照らし合わせながら書類を準備しました。②の固定資産評価証明書は、佐世保市役所が第三者に交付してくれるものか不明だったので、裁判所に提出後に相談することとしました。
 申請書を作成し添付書類も揃えたので、裁判所の事務官へ提出しに行きました。まず、受理する前段階として、登記簿上の現在の所有者がご存命であるかの確認をしてほしいとのことでした。具体的には、市役所へ行って、登記簿上の所有者の住民票を取得してきてくださいと指示をされました。
 そこで佐世保市役所の戸籍住民窓口課へ行き、所有者不明土地(建物)管理命令申立書を裁判所へ提出するのだけど、裁判所の事務官から、所有者の生存確認のために住民票を取得してくるように言われたことを説明し、裁判所に提出予定の申立書類を渡して裁判所の事務官の名前も伝えました。30分ほど窓口で待たされた後、担当職員が来て、裁判所の事務官と電話で確認が出来たので、申立書のコピーを取らせてもらうことを条件に住民票はお出し出来ますという返事をもらうことができました。
 こうして登記簿上の所有者の住民票も取得できて、その生存確認も取れたので、今後の手続きに必要な収入印紙と郵便切手を購入して、所有者不明土地(建物)管理命令申立書をとりあえず受理してもらうことが出来ました。ただし添付書類のうち②の固定資産評価証明書はまだ手配できていない状態での受理になったので、後日佐世保市役所へ行って取得する約束をして裁判所をあとにしました。


2024年11月 【法務省(裁判所)と地方自治体(佐世保市役所)との不毛な対立】

 添付書類のなかで唯一の不足書類である固定資産評価証明書を取得するために、田中理事長と佐世保市役所を訪れました。不動産登記簿上の所有者の住民票を取得するときと同じく、窓口の職員に「所有者不明土地(建物)管理命令申立書」を裁判所に提出しており、その添付書類として固定資産評価証明書が手続上必要になるので交付してほしい旨を説明し、先月裁判所に提出した申立書のコピーを渡して裁判所の事務官の名前も伝えて窓口で待ちました。
 しばらくすると事務員が出てきて、基本的には第三者に固定資産評価証明書の交付はできないということで、今回の「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」の手続きに使う目的のために交付できるか否かについては即断できないので、今日のところは一度お帰りいたただいて、交付の可否について佐世保市役所としての回答が準備でき次第電話連絡しますので、もう一度来庁いただけないでしょうかという話しでした。
 それでは困るので、今ここで待ちますから、佐世保市役所として「所有者不明土地(建物)管理命令申立書」に添付する使用目的のために、固定資産評価証明書を第三者に交付できるのか、できないのか明白な回答をいただきたいと伝えて、窓口で田中理事長と待つことになりました。事務所の奥のほうでは佐世保市の職員が数名集まって協議しているのが見えましたが、結局2時間半ほど待つこととなりました。
 最終的に結論が出たらしく職員2名が私たちのところにやって来て説明を始めました。結論は、佐世保市としては今回の「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」に必要である当該不動産の所有者の固定資産評価証明書は第三者には交付できないという回答結果でした。それは裁判所の事務官とも電話で協議した上での判断ということでした。
 後に裁判所の事務官から聞いたのですが、裁判所の事務官は佐世保市職員に対して、「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」の手続規則を教示して、佐世保市に固定資産評価証明書の交付を求めたそうでした。それによると、規則には「裁判所は、非訟事件の手続の申立てをした者に対し、当該申立てに関する申立書及び当該申立書に添付すべき書類のほか、申立てを理由づける事実に関する資料その他同条の手続の円滑な進行を図るために必要な資料の提出を求めることができる。」という文言があるので、これが根拠規定になるので固定資産評価証明書の交付をお願いしますと電話で伝えたそうです。しかしながら佐世保市役所の職員の回答は、「提出を求めることができる」という文言を根拠にして、固定資産評価証明書の交付は任意的なものだから、今回は佐世保市としては交付致しかねますという論法で説明してきたという結果となりました。
 2時間半待ちながら職員の動きを観察していましたが、固定資産税を徴収している部署でありながら、空家対策をしている建築指導課の職員とは協議することもなく、はじめに「交付しない」という結論ありきで、その根拠規定を探すために2時間半を費やす姿にガッカリしました。くわえて、今回の「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」を新設して、市町村では解決困難である「空家問題」をどうにかして解決しようとしている「法務省」に対しても、まるで盾突くかのような佐世保市の対応は由由しき問題であると思います。
 そもそも「空家問題」は住民の身近に存在している市町村が解決に向けて取り組むべき問題であるにもかかわらず、佐世保市役所は何十年も放置してきた経緯があります。近隣住民が隣に存在する空家が迷惑なので、所有者と連絡を取りたいと言って市役所の建築指導課にお願いしても、固定資産税を徴収している税務課が現在の持ち主の連絡先を知っていても内部(建築指導課)にも情報を開示してくれないという理由で断られるのが現状です。
 今回の「所有者不明土地(建物)管理命令申立書」を裁判所に提出する前から、当該空家については建築指導課の担当職員に相談してきており、建築指導課の職員も現地へ来て当該空家の状況の確認をしてくれています。にもかかわらず、市役所の税務課の職員は、固定資産税を徴収することだけしか眼中になくて、社会問題化して久しい「空家問題」解決に関しては、まるで対岸の火事のような他人事の対応でした。
 空家となって周辺住民に害悪を撒き散らしているような不動産から固定資産税を徴収している市役所税務課が、空家の存在で困っている地域住民に対して所有者の連絡先を開示しないという状況のなかで、藁にもすがる思いでわざわざ多額の費用をかけて裁判所の「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」を使うという回り道をしてきている住民に対して、その手続に規定されている添付書類である固定資産評価証明書の請求すら却下するというのは、あまりに理不尽であり住民泣かせのパラドックスだと思います。
 佐世保市の職員が業務を遂行するうえで、個人情報の取扱いに慎重になることは大事なことです。しかしそれを過度に頑ななまでに適用すると、本来であれば速やかに解決できるであろう「空家問題」が、拗れに拗れる結果になってしまいます。「空家対策」をしている建築指導課と固定資産税を徴収する税務課が連携して対応してくれれば、わざわざ法務省が新設した「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」に30万円の費用をかけて持ち主の所在探しをしなくて済む話だと思います。
 だからこそ法務省が新設した制度を使って空家問題を解決しようとしている住民に対して、佐世保市役所はもっと住民ファーストの目線で対応する必要があると思います。庁内で税務課と建築指導課が縦割行政の弊害で情報を共有化できなかったり、国と地方で行政の権限の行使についての不毛な対立のせいで、住民が抱える問題解決の障碍になってはいけないと思います。
 空家廃墟問題というものは、地域住民、町内会、市町村、裁判所(法務省)が協力して初めて解決できるものだと思います。それこそが真の意味での「市民協働」なのだと思います。このような「市民協働」が実現された地域コミュニティを再生することができれば、これ以上空家が増えることは未然に防ぐことが必ずできると考えます。
 以上のような経緯により、手続に必要な添付書類である固定資産評価証明書の手配は、来年に持ち越しとなりました。

2025年2月

 これまで所有者不明の放置空家については、現在の持ち主の所在を探すために様々な方策を尽くしてきました。どれも時間がかかるばかりで何も進展しない現状を打破すべく、少々強引ではありますが、廃墟化しつつある危険な放置空家については、看板を物件に掲示することにしました。「管理地 させぼ山手研究会」という看板を製作して掲示する前に、地域の住民の皆さんには今回の看板設置の趣旨説明を書いたチラシを配布することとしました。当該物件については、1年ほど前から佐世保市役所の建築指導課と相談協議してきた物件であり、今回の看板設置についてもその趣旨説明を行い報告は済んでおります。
 その趣旨は、放置空家を廃墟化するまで放置し続けてきた所有者と直接話がしたい、所有者の連絡先を知りたいというのが目的であり、占有して所有権を時効取得することが目的ではないということです。

 空き家看板お知らせ


2025年3月

 裁判所から連絡があり今後の手続きについて話し合いがしたいということで、田中理事長と裁判所へ行ってきました。今後手続きを続行した場合、管理人を選任すると弁護士あるいは司法書士に費用が発生すること、さらに物件の管理に要する費用については申立人が立て替える必要があるので、まずはもう一度、佐世保市の建築指導課へ相談に行き、特定空家に指定してもらって行政指導を所有者に対して行うなどの方法をオススメしますということでした。
 裁判所に申請を出す前から当該物件については建築指導課と何回か協議していたので、たらい回し的な感じもしたものの、面白そうなので素直にたらい回しを実行してみました。いつも相談をしている建築指導課の職員に事情を説明したところ、特定空家に指定するには物件を点数で評価するそうでした。現地に物件を見に行って点数評価してくれると言われました。
 後日建築指導課から電話があり、白南風町の空家3件について評価してみたところ、特定空家に該当する点数になる物件はないということでした。見た目は廃墟化しているような空家についても、特定空家の要件を満たすには全く評価点数が不足しているという話でした。田中理事長と解体したMさん廃墟でさえ、特定空家には該当しないということなので、この特定空家制度は実質的には「空家対策」として空家問題を解決する手段としては機能しないことが分かりました。特定空家に該当するためには、交通量が多い道沿いにあって建材が崩れて極めて危険であるなどの状況にないと「特定空家」には指定されないということです。

 今回申立をしていた物件については、所有者と連絡が取ることが出来ましたので、所有者不明という状況が解消されたので、1件目の「所有者不明土地建物管理命令申立」は取下げということとなりました。
 準備が出来次第、2件目の放置空家について「所有者不明土地建物管理命令申立」を行おうと思います。


2025年11月

 久しぶりに市役所の建築指導課へ行きましたが、人事異動と部署の若干の変更が行われていて、今まで相談していた案件の内容を知る職員がいなくて、また引き継ぎもされていなかったため、初めてお会いする職員の方とこれまでの経緯を含めた相談をしました。
 今まで所有者の連絡先を知ろうとしてあらゆる方策を尽くしてきましたが、全部失敗したため、最終手段として「管理地 山手研究会」の看板を放置不動産に掲示していることを伝えて、これらの廃屋をどのように美化していったら良いのかを話し合いました。
 またNさん所有の廃屋の庭木が道路に出て危険だったので、田中さんが庭の大木や雑木を伐採したところ、建物の2階部分の損壊が激しくて、雑木や大木が建物を覆い隠すように支えていたことが分かりました。庭木を伐採したことで、壁や柱が損壊して大変危険であることが明るみに出てしまったので、建築指導課としても対応を急いで欲しい旨のお願いもしてきました。


2026年1月

 建築指導課の担当職員から電話がありましたので田中さんと市役所へ行きました。Nさんの廃屋について、建物部分の所有者が2人に分かれているという話があり、2階部分の所有者とは連絡がついたとの話でした。今の所有者も物件がこのような状況にあることを初めて知って驚いているそうでしたが、こういう危険な状態になっていて地元住民が困っていることを不在地主は知る術もないことにびっくりしました。
 建築指導課としては引き続きもう一人の所有者の相続人の連絡先を調べてみるということと、2階部分の所有者と田中さんが話ができるように電話番号を教えて欲しいとお願いしてきました。
 この物件もそうですが、住民が住まなくなった後も庭木は成長するので、建物と同じくらいの高さになると落ち葉が屋根に積もって、雨樋を詰まらせ、溢れた雨水が木を腐らせて柱や壁を腐らせて崩壊へと導きます。庭木を直植えするときは、ずっと小まめに剪定して世話をし続けなければなりません。空き家にしてしまうときは最低限、庭木は伐採すべきだと思うのですが、廃屋まで放置される不動産の所有者は、転居後はもう物件を見には来ないことが多いように思います。
 白南風町は風が強い地域ですので、早く予防措置として、フェンスで囲むとかの応急措置をして欲しいと思います。