2024年6月
近所の人ももう所有者の連絡先を知る人もいない物件である。たいそう昔に住んでいたのは、学校の先生をしているNさんだったという話である。屋根が落ちて廃墟となり近隣住民に迷惑をかけているMさんの物件の予備軍とも言える荒廃した空家である。
とはいえ色々調べた結果、Nさんの次の転居先を知ることができたので、田中理事長と早岐方面へ行ってみた。その住所にある物件をウロウロしていたら、お隣の方が声を掛けてくれたので、白南風町から引っ越してきて住んでいたNさんのことを尋ねてみた。こちらの地域は戦後引揚者のための市営住宅であった場所で、それが払い下げて宅地化されたそうで、Nさんが借りていた借家の大家さんは早岐駅前の美容室のオーナーで、Nさんとはお知り合いの仲だったらしい。Nさんが転居してもう十数年経つので、Nさんが次にどこへ転居したかは分かりませんという話だった。近所に町内会長の家があるから、そこで聞いたらもしかしたら分かるかもしれませんと教えていただいた。
2024年7月
この物件も九州電力の電線に樹木が接触しており、火災の危険性がゼロではないので、樹木の剪定や伐採が必要である。九州電力のOさんに現地を確認してもらった。また市役所の建築指導課のIさん、Mさんにも現地を確認してもらい、市役所でNさんの居所を把握しているかどうか確認してもらうこととなった。
市役所は所有者情報を教えてくれないので、裁判所の所有者不明土地(建物)管理命令申立制度を利用して、現在の所有者を見つけ出して、適正管理をするように依頼することにした。早速、田中理事長と裁判所へ行き、申立書の書き方などを事務官と行なった。
所有者不明土地(建物)管理命令申立書
収入
印紙
令和〇年○月○日
佐世保地方裁判所 御中
貼用印紙 円
予納郵券 円
第1 当事者の表示
別紙当事者目録記載のとおり
第2 申立ての趣旨
別紙物件目録記載の土地(建物)について所有者不明土地(建物)
管理人による管理を命ずる
との裁判を求める。
第3 申立ての原因
1 利害関係を基礎づける具体的事情
2 対象土地(建物)が所有者不明土地(建物)に当たることを基礎づ
ける事情
別添「所有者・共有者の探索等に関する報告書」のとおり、別紙物
件目録記載の(土地・建物・共有持分)について、所有者を知ること
ができず、又はその所在を知ることができない。
3 発令の必要性
(1) 対象土地(建物)の現状の管理状況
上記のとおり、現在の所有者は不明であり、何らの管理もされて
いない。現状は、以下のとおり
(2) 対象土地(建物)に必要な管理行為の内容
4 よって、申立ての趣旨記載の裁判を求める。
添付書類
□申立書副本(管理人用)
□所有者の土地又は建物に係る登記事項証明書
□固定資産評価証明書
□建物の敷地利用権を証明する資料(該当する場合)
□不動産登記法14条1項の地図又は同条4項の地図に準ずる図面の
写し
□土地(建物)の所在地に至るまでの通常の経路及び方法(土地(建
物)の住居表示を記載する。)を記載した図面
□(申立人が保有する場合)土地(建物)の現況調査報告書又は評価書
□(登記されていない場合)土地についての不動産登記令2条2号に
規定する土地所在図及び同条3号に規定する地積測量図
□(登記されていない場合)建物についての不動産登記令2条5号に
規定する建物図面及び同条6号に規定する各階平面図
□所有者・共有者の探索等に関する報告書
当事者目録
(別 紙)
〒●●●‐●●●● 東京都●●区●●町●丁目●●番●●号
申立人 ●● ●●
〒●●●‐●●●● 東京都●●区●●町●丁目●●番●●号(送達場所)
上記代理人弁護士 ●● ●● 電話番号
FAX番号
住居所不明 (最後の住所)東京都●●区●●町●丁目●●番●●号
不明所有者 ●● ●●
【※不明者以外の共有者がいる場合】 〒●●●‐●●●● 東京都●●区●●町●丁目●●番●●号
共有者
●● ●●
物件目録
(別紙)
(土地) 所在 地番 地目 地積
共有の場合、持分は以下のとおり
(建物) 所在 家屋番号 種類 構造 床面積
共有の場合、持分は以下のとおり
最初に申し立てをするときに、郵便切手代として¥6,000、物件ごとに¥1,500の収入印紙が必要である。また管理人が選定されると、管理人に対して事務報酬として30万円ほど必要になる。添付書類として、登記簿謄本、不明所有者の戸籍謄本、固定資産評価証明書が必要であるが、戸籍謄本と固定資産評価証明書の取得は、個人情報保護の現代にあっては第三者による取得は難しいので、かなりの手間がかかる。
2026年1月
廃墟の草木が道にまではみ出して生い茂っていて、これまでは道から届く範囲で枝を切ったりしていました。しかしそのような処理では追いつかないほど草木が大きくなってしまっているので、田中さんが敷地内に入って、樹木などを根本から伐採しました。道沿いの敷地なので、この数十年間にポイ捨てされたゴミや、粗大ゴミが出てきて大変でした。
敷地がスッキリしたのは良かったのですが、これまで草木に覆われて見えなかった廃墟の危険な状況が明るみに出てしまって、これまで考えていたよりもこの廃墟は倒壊の危険が高いことがわかりました。以前にも佐世保市役所の建築指導課の担当者には、この周辺の空き家で危険なものを報告して、市の職員には見に来てもらっていましたので、久しぶりに佐世保市役所建築指導課へ行きました。
1年ほどブランクがあったので、担当してくれていた職員さんは異動となっており、担当部署名も若干の変更があって、また一からの説明となりました。市役所としてはまずは所有者の方の所在と連絡先を調べてみますので、少し時間をくださいという返事でした。後日田中さんに市役所の職員さんから電話があり、持ち主は二人いて共有されている物件であることの報告と、一方の所有者とは電話で話をすることができましたという連絡がありました。
差し支えなければ、所有者さんに田中さんの連絡先を教えてもらって、できたら電話をかけて欲しいと伝えていただいたところ、持ち主さんから田中さんに電話がありました。持ち主さんによると、もう長いこと現地を見に行っていないので、まさかそんなに危険な状況になっているとは思っていませんでした、危険の除去は早急にしたいと考えていますが、まずは現地を見に行きたいと思っているとのことでした。
その後、廃墟の危険性の除去の方法について、田中さんが業者の見積もりを取るなどして、所有者と協議を重ねました。持ち主さんとしてはあまりお金をかけずに危険を除去したいそうで、完全解体ではなく崩れそうな部分に足場を組んで覆いをかけるなどの応急措置を施したいという考えでしたが、実際に業者さんに現地を見てもらうと、足場などの資材を購入して設置するとなると完全解体よりも高く費用がかかってしまうとの話でした。
佐世保市役所としても現状では解体費用の助成金は出せないということで、また田中さんとしても2階建ての廃墟の解体を個人でするのは危険すぎるので手が出せず、所有者も突然廃墟の解体費用を出せと言われても対応できないという結果となりました。
この物件は石垣の上に建っているような物件ではありませんが、白南風は風が強いので廃墟の建材が強風で飛散する恐れもあります。隣にはアパートがあり、家が密接して建っている場所なので、解体されるまでは何か事故があった都度、所有者さんに対応してもらうように、市役所の担当者にお願いするしかできませんでした。



