【法務省(裁判所)と地方自治体(佐世保市役所)との不毛な対立】
添付書類のなかで唯一の不足書類である固定資産評価証明書を取得するために、田中理事長と佐世保市役所を訪れました。不動産登記簿上の所有者の住民票を取得するときと同じく、窓口の職員に「所有者不明土地(建物)管理命令申立書」を裁判所に提出しており、その添付書類として固定資産評価証明書が手続上必要になるので交付してほしい旨を説明し、裁判所に提出した申立書のコピーを渡して裁判所の事務官の名前も伝えて窓口で待ちました。
しばらくすると事務員が出てきて、基本的には第三者に固定資産評価証明書の交付はできないということで、今回の「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」の手続きに使う目的のために交付できるか否かについては即断できないので、今日のところは一度お帰りいたただいて、交付の可否について佐世保市役所としての回答が準備でき次第電話連絡しますので、もう一度来庁いただけないでしょうかという話しでした。
それでは困るので、今ここで待ちますから、佐世保市役所として「所有者不明土地(建物)管理命令申立書」に添付する使用目的のために、固定資産評価証明書を第三者に交付できるのか、できないのか明白な回答をいただきたいと伝えて、窓口で田中理事長と待つことになりました。事務所の奥のほうでは佐世保市の職員が数名集まって協議しているのが見えましたが、結局2時間半ほど待つこととなりました。
最終的に結論が出たらしく職員2名が私たちのところにやって来て説明を始めました。結論は、佐世保市としては今回の「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」に必要である当該不動産の所有者の固定資産評価証明書は第三者には交付できないという回答結果でした。それは裁判所の事務官とも電話で協議した上での判断ということでした。
後に裁判所の事務官から聞いたのですが、裁判所の事務官は佐世保市職員に対して、「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」の手続規則を教示して、佐世保市に固定資産評価証明書の交付を求めたそうでした。それによると、規則には「裁判所は、非訟事件の手続の申立てをした者に対し、当該申立てに関する申立書及び当該申立書に添付すべき書類のほか、申立てを理由づける事実に関する資料その他同条の手続の円滑な進行を図るために必要な資料の提出を求めることができる。」という文言があるので、これが根拠規定になるので固定資産評価証明書の交付をお願いしますと電話で伝えたそうです。
しかしながら佐世保市役所の職員の回答は、「提出を求めることができる」という文言を根拠にして、固定資産評価証明書の交付は任意的なものだから、今回は佐世保市としては交付致しかねますという論法で説明してきたという結果となりました。
2時間半待ちながら職員の動きを観察していましたが、固定資産税を徴収している部署でありながら、空家対策をしている建築指導課の職員とは協議することもなく、はじめに「交付しない」という結論ありきで、その根拠規定を探すために2時間半を費やす姿にガッカリしました。くわえて、今回の「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」を新設して、市町村では解決困難である「空家問題」をどうにかして解決しようとしている「法務省」に対しても、まるで盾突くかのような佐世保市の対応は由由しき問題であると思います。
そもそも「空家問題」は住民の身近に存在している市町村が解決に向けて取り組むべき問題であるにもかかわらず、佐世保市役所は何十年も放置してきた経緯があります。近隣住民が隣に存在する空家が迷惑なので、所有者と連絡を取りたいと言って市役所の建築指導課にお願いしても、固定資産税を徴収している税務課が現在の持ち主の連絡先を知っていても内部(建築指導課)にも情報を開示してくれないという理由で断られるのが現状です。
今回の「所有者不明土地(建物)管理命令申立書」を裁判所に提出する前から、当該空家については建築指導課の担当職員に相談してきており、建築指導課の職員も現地へ来て当該空家の状況の確認をしてくれています。にもかかわらず、市役所の税務課の職員は、固定資産税を徴収することだけしか眼中になくて、社会問題化して久しい「空家問題」解決に関しては、まるで対岸の火事のような他人事の対応でした。
空家となって周辺住民に害悪を撒き散らしているような不動産から固定資産税を徴収している市役所税務課が、空家の存在で困っている地域住民に対して所有者の連絡先を開示しないという状況のなかで、藁にもすがる思いでわざわざ多額の費用をかけて裁判所の「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」を使うという回り道をしてきている住民に対して、その手続に規定されている添付書類である固定資産評価証明書の請求すら却下するというのは、あまりに理不尽だと思います。
佐世保市の職員が業務を遂行するうえで、個人情報の取扱いに慎重になることは大事なことです。しかしながらそれを過度に頑ななまでに適用すると、本来であれば速やかに解決できるであろう「空家問題」が、拗れに拗れる結果になってしまいます。「空家対策」をしている建築指導課と固定資産税を徴収する税務課が連携して対応してくれれば、わざわざ法務省が新設した「所有者不明土地(建物)管理命令申立制度」に30万円の費用をかけて持ち主の所在探しをしなくて済む話だと思います。
だからこそ法務省が新設した制度を使って空家問題を解決しようとしている住民に対して、佐世保市役所はもっと住民ファーストの目線で対応する必要があると思います。庁内で税務課と建築指導課が縦割行政の弊害で情報を共有化できなかったり、国と地方で行政の権限の行使についての不毛な対立のせいで、住民が抱える問題解決の障碍になってはいけないと思います。
空家廃墟問題というものは、地域住民、町内会、市町村、裁判所(法務省)が協力して初めて解決できるものだと思います。それこそが真の意味での「市民協働」なのだと思います。このような「市民協働」が実現された地域コミュニティを再生することができれば、これ以上空家が増えることは未然に防ぐことが必ずできると考えます。
以上のような経緯により、手続に必要な添付書類である固定資産評価証明書の手配は、後日に持ち越しとなりました。
